Tonight!!

Franz Ferdinand『Tonight』がとにかく素晴らしい!!
Franzの最高傑作であることだけでなく、すでに今年の年間ベストアルバムになるかもしれない。それぐらい最高な作品を届けてくれた。


リリース前の情報としては、前作がbpm140辺りで走り抜けるアルバムだったのに対して、今作ではグッと抑えてbpm100前後のテンポでダンス・ミュージックを作ったこと。
とにかくエロティシズム満載なアルバムになったこと。


ここ数年の音楽シーンの盛り上がりから考えれば、bpm100前後というのはありえないぐらい遅い。
年を跨いで虜になっている『Friendly Fires』でも110付近。
「ホントにそんなモノで踊れるのか?」という疑問はいくらでも沸いて来るわけだ。
しかし、この100という数字は人の心拍数にかなり近い値とのことらしく、まさにフロアで踊る時の心拍数がこの近辺だというデータがある。
人間の"踊る"という動作に根ざした速さで、これほどダンス・ミュージックとしてのテーマに沿ったアルバムは他に類を見ない。
そして、ダンス・ミュージックとなった所以は、サイケやプログレを思い起こさせるリズムを背後に、シンセやドラムで軽快な音を前面に押し出しているからである。
これならば、自然に体が揺れるように踊りだしても不自然ではない。
bpm140なんて無理矢理に速める必要もなく、ごく自然に踊らせる。
この手腕は見事としか言い様がない。


続いて、エロいって事についてですが、エロいのではなく、セクシーでロマンティックなんだと言い換えて欲しい。
アレックスの耳元で囁かれるようなヴォーカルもだが、アルバムを通して"夜(タイトルも『Tonight』)"を彷彿とされる物語が展開し、10曲目"Lucid Dream"でハイライトを迎える。
夜に聞きたくなるような怪しげな雰囲気を醸し出しているからこそ、「エロい」と言われる作品になったのだろう。


以上に加えておきたいのが、バンドのグルーヴ力がここ最近のバンドよりもズバ抜けて秀でている事。
前述の通り、遅いのに踊れるぐらい気持ち良いってだけで実はすごい事だったりするのだが、さらにコーラスの入れ方、曲の構成、ブレイク・・・
全てにおいて"大人"の要素が溢れてる。そんなイメージを持った。
それは6曲目"Bite Hard"や7曲目"What She Came For"で、瞬間的にbpmを速める技法を聞いてもらればお分かりいただけるだろう。


『2000年代前半世代の逆襲』と先号のsnoozerの特集があったが、ようやく逆襲が果たせた。
そして、それを果たしたのがFranzであって良かったと今は思う。
2000年代に入って約10年が経とうとしているが、The Strokes以降の音楽を全部まとめて1枚に、いや70年代にまで遡った近代音楽シーンのイイとこ全てを網羅したような歴史的なアルバムになったと最大限の賞賛を送りたい。
ありがとうFranz!!
これ以上の言葉が見つからないほど大好きだ。最高。
ようやく『Friendly Fires』への執着から逃れられそうです。

トゥナイト

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